2012年02月05日

鬼の夢

血の色した池の周りでは鬼達が頭を抱え「痛い痛い」とうめき声を発してる場面をたまに思い出します。
その場面は時には私の夢となって登場したり、時には白昼に突然に私の脳裏に映し出されたりします。
それは「こんな夢を見た」で始まる黒澤明監督の映画「夢」の中の一つの物語。
黒澤監督が見た夢を映画化した晩年の作品だったの思います。
この映画は十年以上前にテレビで見たのですが、この場面は物凄い勢いで私の中に入って来て居座り、その記憶はことあるごとに表面に滲み出てきます。
それで気になってもう一度見てみようと先日DVDを借りて見ました。
8話のオムニバスになっているこの映画は第1話からとても異様な世界観でした。
1話の狐の嫁入りの行進を見てしまった少年の話から始まり、
最後の8話ではある村では人が死ぬとお祭りのように楽しみ管楽器を演奏しながら村人が楽しそうに奇妙な踊りを踊りながら行進します。
この第1話の狐の嫁入りの行進と、最後の死者を送り出す行進がつながっているように思います。
特に今だからこそ印象的だったのは第6話の「赤富士」です。
赤く燃える富士山、そこでは何かが爆発しています。6基の原発が爆発しているのです。
子連れの女性が「原発は安全だ。絶対に安全だと言ったじゃないか」と叫ぶ。
逃げる沢山の人々。被爆した人は海に飛び込み皆死んでしまう。
これを当時見た人は何を思っただろう?
チェルノブイリの事故の後の作品です。何をバカの事を言っているんだと日本だけは安全と信じていたのでしょうか?

そして私が何度も思い出す第7話の「鬼哭」
悪行ばかりした人間は鬼になってしまうという物語。
周りには放射能で巨大化したタンポポ。
鬼になった人間は角の生えた頭をかかえ「痛い痛い」とうめいている。
まるで地獄絵のような場面。


物語全般は自然破壊に対する警告と人間の悪行を訴えています。
夢だからとてもシュールでとても異様で全8話全てが面白いです。
中学生の時「羅生門」を見た時も何だかとても衝撃を受けた記憶があります。
それと同じく私にとってはとても衝撃的な作品です。
こういったテーマの作品は沢山ありますが、この世界観はダントツで大好きです。

私は思うのです、
こういった商業的ではない映画は上映された当時はそれほどでも、
数年後になってジワジワとその重要性に気付かされるのではないかしらと。
posted by kyoko at 04:06| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする